国際シェアハウスに引っ越して、最初の数日間。廊下で外国人のルームメイトとすれ違いました。
「Hi!」と声をかけてきた彼女に、私はなんとか「Hi!」と返せた。それだけで精一杯で、そのままそそくさと自分の部屋に戻りました。
あの時の動悸は、今でも覚えています。
挨拶はできる。でも、その次が出てこない
入居してすぐの頃、外国人との会話で一番困ったのは「挨拶の次」でした。
「Hello!」「Hi!」は言える。でも廊下で少し立ち止まって会話になりそうになると、急に頭の中が真っ白になる。
特に困ったのが「How are you?」です。
今では当たり前のように返せるこの言葉ですが、最初に聞かれた時、私は何も言えませんでした。
「どう答えるんだ?」「I’m fine. でいいのか?」「でも “fine” って文脈によっては良くない意味になるとか聞いたことある気がする…」——頭の中でそんなことが高速で駆け巡っている間に、沈黙が続いてしまいました。
笑顔でごまかしながら、その場をなんとか乗り切りました。
自分の部屋に戻って、スマホで答えを調べた
その夜、部屋に戻ってから「How are you 返し方」と検索しました。
「Good! And you?」——これだ、と思いました。シンプルで自然で、相手への関心も伝えられる。
次に同じ場面が来た時のために、声に出して何度か練習しました。
数日後、また「How are you?」と声をかけられました。今度は「Good! And you?」と返せた。
ちゃんと会話になった。たった一言ですが、その時の小さな達成感は今でも鮮明に残っています。
この経験から気づいたのは、「通じなかった言葉は、その場で終わりにしない」ということです。「次に同じ場面が来たらこう答える」を準備しておく。それを繰り返すだけで、少しずつ自分の「引き出し」が増えていきます。
英語が伝わらない瞬間の、私の乗り越え方
もちろん、「How are you?」だけで全ては解決しません。会話が深くなると、言いたいことが言葉にならない場面は何度もありました。
そういう時によくやっていたのが、ジェスチャーです。
伝えたいことの英単語がわからない時は、体で表現する。パントマイムみたいに身振り手振りで伝えると、意外と通じるし、笑いにもなる。
スマホも頼りにしていました。伝えたいものの画像を検索して見せる。翻訳アプリで単語だけ表示して確認してもらう。どうすれば伝わるかを試行錯誤しながら、いろんな方法を使いました。
完璧な英語じゃなくていい。「なんとかして伝わればOK」——そう考えるようになってから、気持ちが少し楽になりました。
英語はコミュニケーションの「ツール」です。文法が少しくらいおかしくても、発音が完璧でなくても、伝わればそれでいい。その発想の転換が、私が英語と向き合い続けられた大きな理由のひとつです。
「知っている英語」は、思ったよりずっと多い
英語が通じなくて焦っていた頃、あることに気づきました。
思っていたより「知っている言葉」がある、ということです。
日本の日常にはカタカナの外来語があふれています。そのほとんどは英語から来ていて、英語っぽく発音するだけで意外と通じます。
・サンドイッチ → Sandwich
・チーズ → Cheese
・デスク → Desk
・チェア → Chair
・ペーパー → Paper
さらに言えば、中学・高校の英語の授業。「全部忘れた」と思っていても、完全にゼロではありません。全く触れたことのない言語と、昔授業でやったことのある言語では大きく違う。英単語も英文法も、実際の会話の中でしっかり出てきます。
「英語ゼロ」と言っていた自分も、実は「ゼロに近い何か」は持っていたんだと、あとから気づきました。
「怖さ」が薄れていったのは、こういうことがあったから
毎日廊下ですれ違い、挨拶を交わす。たったそれだけのことが、じわじわと効いてきます。
「How are you?」に答えられた日、ジェスチャーで笑いが生まれた瞬間、スマホの画像を見て「あーそれか!」という表情をされた時——そういう小さな成功体験が積み重なって、「外国人と話すのが怖い」という感覚は少しずつ消えていきました。
一つ、気づいたことがあります。外国人といっても、英語がネイティブの人ばかりではありません。
ドイツ語やスペイン語、中国語などが母国語で、英語を第二言語として話している人は世界中にたくさんいます。そういう方たちは英語を話すスピードがゆっくりで聞き取りやすく、こちらの拙い英語も受け入れてくれやすい。「お互いに完璧じゃなくていい」という空気が自然と生まれます。
「間違ってもいいや」と思えるようになったのは、そういう環境があったからかもしれません。
まとめ|「固まる」のは最初だけ
英語が全く通じなくて固まった瞬間、私にも何度もありました。
でも振り返ると、「固まっていた期間」は思ったより短かった気がします。
毎日ちょっとずつ顔を合わせて、一言だけでも返せるようになって、通じた瞬間が積み重なっていく。その繰り返しが、知らないうちに自分を変えていきました。
英語が話せるかどうかより、「話そうとする姿勢」のほうが先にくる。それが、シェアハウスの5年半で一番実感したことです。
「How are you?」に固まっていた私でも、変われました。あなたも、きっと大丈夫です。
「5年半でどう変わったか」の全体像はこちらの記事でお読みいただけます。


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